これは2回目のイタリア旅行から帰国する時の話なのですが、
1)ローマ フィウミチーノ空港発の帰国便が早朝出発のため、前夜遅くに空港に行って空港で一夜を過ごそうと計画
2)当時の某ガイドブックの読者投稿欄に「ローマ ティブルティーナ駅から空港へ向けて24時過ぎの最終便があるとの記載が
3)僕たちが泊まっていたホテルはローマ テルミニ駅近く。空港行きの電車が出るローマ ティブルティーナ駅までは地下鉄で8分
4)あらかじめローマ ティブルティーナ駅から空港までの電車の切符を買い、ローマで最後の晩餐を楽しんだ後、空港に向かう
5)帰国前夜なので円はともかくリラはほとんど残っていない
あたりを前提にお読みいただければと思います。
ここが事件?の舞台となったローマ ティブルティーナ駅のバス乗り場です。
(写真はペルージャの駅で突然の夕立にあったときの写真です。ローマの鉄道っぽい写真がなかったのですいません)
空港行きの最終電車が出発するはずの駅に到着するとそこは・・・・
ローマでの最後の食事をテルミニ駅近くのトラットリアで楽しんだ僕と友人は、お世話になったホテルで預かってもらっていたスーツケースを受け取り、お礼とお別れを言ってホテルを後にしました。
予定している空港行きの電車の時間にはまだ早かったものの、23時過ぎにローマテルミニ駅までスーツケースを押し地下鉄に乗り込みローマティブルティーナ駅を目指します。
無事に地下鉄のローマティブルティーナ駅に到着し、国鉄の駅に向かうと何やら様子がおかしいです。
国鉄の駅に人の気配はなく、乗客の姿も駅員さんの姿も見当たりません。
ただ、ちょうどこの旅の始まりがベルギーのサベナベルギー航空でブリュッセル経由パリに到着のスケジュールだったのですが、ブリュッセルの空港で管制塔がストライキとかでパリ行きの便が飛ばずブリュッセル空港で4~5時間待ちぼうけ→深夜にパリについたときは地下鉄に駅員さんの姿はなく地下鉄だけが走っている、というのを経験していましたので、このときも
「ヨーロッパだと深夜の駅は無人になって電車だけが走るのかな?」
なんて考えていたのですが、しかし。
しばらく辺りを右往左往している僕と友人の姿を見た、タクシーの運転手らしき男性が話しかけてきます。
『もう電車はないよ!!タクシーで行くしかないよ!!』
まさかの言葉に不安と焦りが募りましたが、
「ちなみに空港までいくらですか?」
と聞いたところ、正確な金額は覚えていないもののそこそこの値段を言われまして
「ごめんなさい、それだけのお金持ってないです」
と答えると、
『日本円でもいいよ!!』
と、食い下がってきますが、基本僕は向こうから話しかけてくる人の言うことを信用してません。(笑)
本当に電車がないのかどうかもわからなかったので、とりあえず男性に「グラッツィエ」と言って駅の周辺をウロウロ。
と、そこに駅員の制服を着た人が歩いてきたので、声をかけて空港行きの電車のことを聞きました。
すると、「やはり空港行きの最終電車はもう出てしまっていて翌朝までない」ことと共に「ただ、駅のそばのバス乗り場から深夜バスが出るから、それを利用すればいい」ことを教えてもらいました。
希望の光を見出した僕たちは、大慌てでバス乗り場に向かいます。
そのバス乗り場はかなり大きいバス乗り場で、バスが発着するレーンが何本もあって、月明かりの下、空港行きのレーンを探します。
すると「aeroporto」(アエロポルト=空港)の表示を見つけ、そばにあった時刻表にも1時間に1本程度ですが空港行きの深夜便の発車時刻が記載されていたので、友人と2人ホッと肩をなでおろしました。
2月の寒空のもと、ただひたすら空港行きの深夜バスを待ちます
2月の寒空の下、誰もいない屋外のバス乗り場で真夜中にバスを待つというのもある意味貴重な経験です。
最初はある程度元気だった僕たちも、時刻表に書いてある発車時間が近づくというのに一向にバスが姿を見せないことにだんだん不安を覚え始めます。
「イタリアだけに、こんな深夜便でも遅れてるのかな??」
などと考えていたのですが、時刻表に書かれた到着するはずのバスが来ず、そこからさらに1時間以上待った次の便の時間になってもバスが来なかったときはさすがに焦りました。
僕たちが待っている間も他のレーンにはバスが到着しては発車していましたので、バス乗り場自体が閉まっているということはなさそうでした。
「もしかして空港行きのバスのレーンを僕たちが間違ってる?」
と思って全てのレーンの行き先を確認しましたが、やはり空港行きはこの場所でした。
途中、日本のコンパクトカーよりも小さい車が僕たちの前に止まって、「空港まで◯◯リラでどうだい?」と運転手に声をかけられましたが、見てみるとすでに2人お客さんが乗っていて、後部のラゲッジスペースにはスーツケース2個が詰まっていてスペースは残っていません。
「この車のどこに僕と友人が座りスーツケース2個を入れるスペースがあるんだろうか・・・」
と思いつつ、男性の申し出を断ったのですが、男性は値段を下げながら執拗に交渉してきます。
長時間待っていたことと男性のしつこさについ、ポケットからコインを何枚か取り出して、
「今、これだけしかお金ないんですけど、これで行ってくれます?」
と言うと、男性は冷たい視線を僕たちに送りつつ、その場を去って行きました。
救世主現る!?
そして澄み切った夜空と澄んだ空気のもと、沈黙の時間が再び始まります。
たまにバス乗り場にバスが入ってくる度に、「今度こそ僕たちの前へ!!」の願いもむなしく、他のレーンに止まっては発車していきます。
なぜ空港行きのバスだけが来ないのか? の理由はまったくわかりませんでしたが、この頃になってくると、
「日本円出してでも、さっきの男性の車に乗っといた方が良かったんかな?」
「もし国鉄の始発で空港に行った場合、やっぱり飛行機には間に合わないんやろか?」
「最悪、今からタクシー探して行くしかないんかな?」
等々、さまざまな思いが頭をよぎります。
そして待つことまた数十分。
友人との会話も限りなく少なくなってきたとき、1台のバスが入ってきました。
もはや何度目なのかもわからないぐらいの「頼む・・・」という願いはまたしても届かず、僕たちが立っているレーンの1つ向こうのレーンに止まります。
「あぁ、またか・・・ あのバスはどこに行くんやろなぁ??」
と失望していると、到着したバスの運転手さんが僕たちの方を見て手招きしています。
「???」
と思いつつ、スーツケースは置いたまま運転手さんのところに駆け寄り、
「Aeroporto?(アエロポルト=空港)」
と聞くと『Si.』の返事。
慌ててスーツケースを取りに行き、安堵と希望とともにバスに乗り込みました。
って、なんで空港行きのバスなのに隣のレーンに止めたんでしょうこの運転手さんは?(苦笑)
そしてバスの中で、
『キミたち、切符は持ってる?』
と聞かれたので
「これなら持ってるんですけど・・・」
と、本来乗るはずだった国鉄の切符を見せると、『仕方ねえなあ』みたいな苦笑いとともに切符を手で破りました。
そのときは空港に行ける安心感と2回目のイタリアであんまりよくわかってなくて「ん?イタリアは電車の切符でバスも乗れるの?」と不思議に思ったぐらいだったんですけど、あらためて考えてみますと国鉄の切符とバスの切符が共通な訳ないですよねぇ・・・・(苦笑)
ありがとう、バスの運転手さん!!
そして、ついにバスが出発して、ここ数時間に起きたこと考えたこと、そして今こうして無事に空港に向かっていることに思いを馳せながらローマの街並みをぼんやり眺めていると、突然バスが止まりました。
そのときバスに乗っていたのは僕たち2人と運転手さん2名体制の計4人だけだったのですが、
「え、これって空港直行じゃないの? 誰か乗ってくるの??」
と思って様子を見ていると、1人の運転手さんがバスを降りて、お店に入っていきます。
「え?なに??なにが起きてるの??運転手さんトイレ??」
と思っていると、しばらく経ってなにやら手に持って帰ってきます。
そしてバスの扉が開いたとき・・・・車内に美味しそうなエスプレッソの匂いが漂ってきました。
そうです、運転手さん2人で深夜のエスプレッソタイムです。
「さすがイタリア人。(笑)」
と思いつつ、どんなときもイタリア人にエスプレッソは欠かせないんだとあらためて知った次第です。
そこからバスは高速に乗り、当初の予定よりははるかに遅れて空港に到着した僕たちは、朝まで一睡もすることなく搭乗手続きを待ち、無事に機上の人となりました。
おまけ(まさかのバス乗り場との再会)
後日談ですがのちにペルージャで暮らしたとき、電車ではなくバスでローマに行ったことがあったのですが、そのときに到着したのがこのローマ ティブルティーナ駅のバス停でした。
到着した瞬間、「あー!!あのときのバス停!!」懐かしく思い出してなんか感慨深かったです。
今になってこの日の出来事を思い返してみますと、僕たちが見たガイドブックの投稿情報が古かったのか、もしくは出発当日がたまたま日曜日で平日ダイヤではなく祝日ダイヤだったのかな、と。
(イタリアの日曜日は店は閉まってますしバスの本数は激減します。ご注意を!)
みなさまは僕たちのようなトラブルに巻き込まれることがないよう、情報は正確に、事前の準備は丁寧にお願いいたします。
(でもイタリアでは最後はなんとかなること多いんですけど!!笑)
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